【水理学エネルギー講座②】水頭とは?

前回の記事では、

  • 仕事
  • 位置エネルギー
  • 運動エネルギー
  • 力学的エネルギー保存則

について解説しました。

前回学んだように、水も物体と同じようにエネルギーを持っています。

しかし、水理学ではジュール(J)という単位はほとんど使われません。

その代わりに使われるのが

水頭(Head)

です。

今回は、

なぜエネルギーを高さで表すのか

というところから、水頭の意味を詳しく解説します。

エネルギーを高さで表す理由

前回学んだ位置エネルギーは

Ep=mghE_p=mgh

でした。ここで、

Ep​:位置エネルギー(J)
m:質量(kg)
g:重力加速度(m/s²)
h:高さ(m)

です。

しかし、この式だけでは、なぜ水理学で高さ(m)を使うのかは分かりません。

そこで、まずは具体例で考えてみましょう。

例えば、重さ100Nの物体を持ち上げる場合を考えます。

この物体を1m持ち上げると、位置エネルギーは

100×1=100 J100\times1=100\ \mathrm{J}

になります。

さらに、この物体を5m持ち上げると、

100×5=500 J100\times5=500\ \mathrm{J}

の位置エネルギーを持つことになります。

ここで逆に考えてみましょう。

もし、この物体が500Jの位置エネルギーを持っていると分かったら、その物体は何mの高さにあるのでしょうか。

位置エネルギーは、

位置エネルギー = 重量 × 高さ

という関係なので、

高さ = 位置エネルギー ÷ 重量

となります。

実際に計算すると、

=500100=5 m高さ=\frac{500}{100}=5\ \mathrm{m}

となり、元の高さ5mが求められました。

つまり、

位置エネルギーを重量で割ると、そのエネルギーが何mの高さに相当するのかが分かるのです。

これを一般式で表してみます。

質量 (m) と重力加速度 (g) の積は重量 (W) なので、

W=mgW=mg

となります。

したがって、位置エネルギーの式

Ep=mghE_p=mgh

は、

Ep=WhE_p=Wh

と書くことができます。

さらに、この式を高さについて整理すると、

h=EpWh=\frac{E_p}{W}

となります。

先ほど具体例で確認した内容が、そのまま一般式でも成り立っていることが分かります。

つまり、水理学では、位置エネルギーを重量で割ることで、高さ(m)として表すことができるのです。

 ここで位置エネルギーを重量で割る理由は、位置エネルギーだけでなく、後ほど説明する運動エネルギーについても同じように重量で割ることで高さ(m)として表せるためです。つまり、水理学ではすべてのエネルギーを同じ方法で高さに換算し、共通の尺度で扱うことができます。

運動エネルギーも高さで表すことができる

同じことを運動エネルギーでも考えてみましょう。

運動エネルギーは、

Ek=12mV2E_k=\frac{1}{2}mV^2

(Ek):運動エネルギー(J)
(m):質量(kg)
(V):流速(m/s)

前回は、この式を仕事の式から導きました。

ここで位置エネルギーと同じように、運動エネルギーを重量で割ってみます。

重量は、

W=mgW=mg

なので、

==EkW=12mV2mg高さ=\frac{運動エネルギー}{重量} =\frac{E_k}{W} =\frac{\frac{1}{2}mV^2}{mg}

となります。

ここで、分子と分母にある質量 (m) を約分すると、

=V22g高さ=\frac{V^2}{2g}

となります。

つまり、

V22g\frac{V^2}{2g}

は、運動エネルギーを高さ(m)で表したものなのです。

位置エネルギーでは、

=EpW=h高さ=\frac{E_p}{W}=h

 となりました。

 運動エネルギーについても同じように、重量で割ることで高さ(m)として表すことができました。
 このように、水理学では位置エネルギーと運動エネルギーをどちらも高さ(m)に換算することで、異なる種類のエネルギーを共通の尺度で比較できるようにしています。

なぜ水理学では高さで表すのか

前回説明したように、水の流れでは位置エネルギーと運動エネルギーは互いに変化します。

例えば、高い場所から水が流れ落ちると、位置エネルギーは小さくなります。

その代わりに流速が大きくなり、運動エネルギーは大きくなります。

反対に、水の流れが遅くなると、運動エネルギーは小さくなり、その分だけ位置エネルギーが大きくなります。

このように、水の流れではエネルギーの形は変化しても、力学的エネルギー保存則により、エネルギーそのものは保存されます。

そこで水理学では、それぞれのエネルギーを高さ(m)という共通の尺度に換算して考えます。

すると、

「位置エネルギーが1m減少し、その代わりに運動エネルギーが1m増加した」

というように、エネルギーの変化を高さの変化として考えることができます。

このように、水理学ではエネルギーの変化を分かりやすく表すために、エネルギーを高さで表します。

このエネルギーを高さで表したもの水頭と呼びます。

運動エネルギーの式を導いてみる

前回、運動エネルギーは次の式で表されると説明しました。

Ek=12mV2E_k=\frac{1}{2}mV^2

ただし、前回はこの式がなぜ成り立つのかまでは説明していませんでした。

ここでは、仕事と力の関係から、この式を導いてみます。

まず、仕事は次のように表されます。

=×仕事=力\times距離

力を (F)、移動距離を (s) とすると、

E=FLE=FL

となります。

また、物体に力を加えると加速度が生じます。

力、質量、加速度の関係は、

F=maF=ma

です。

これを先ほどの式に代入すると、

E=maLE=maL

となります。

ここで、等加速度運動の関係式を使います。

初速度が0の場合、速度 (V)、加速度 (a)、移動距離 (L) には次の関係があります。

V2=2aLV^2=2aL

この式を変形すると、

aL=V22aL=\frac{V^2}{2}

となります。

これを

E=maLE=maL

に代入すると、

E=mV22E=m\frac{V^2}{2}

となります。

したがって、

E=12mV2E=\frac{1}{2}mV^2

となります。

このようにして、運動している物体が持つエネルギーは、

Ek=12mV2E_k=\frac{1}{2}mV^2

で表されます。

ここで重要なのは、運動エネルギーは速度の2乗に比例するという点です。

つまり、速度が2倍になると、運動エネルギーは2倍ではなく4倍になります。

この運動エネルギーも、位置エネルギーと同じように重量で割ることで、高さ(m)として表すことができます。

なぜV2=2aLになるのか

ここで、

V2=2aLV^2=2aL

という式が突然出てきました。

この式は等加速度運動の公式から導くことができます。

物体が静止した状態(初速度0)から一定の加速度 (a) で運動するとき、速度 (V)、移動距離 (L)、時間 (t) の間には次の関係があります。

まず、速度は

V=atV=at

となります。

また、移動距離は

L=12at2L=\frac{1}{2}at^2

となります。縦軸にv横軸にtをとってv=atのグラフを描いた時の面積です。

ここで、最初の式から時間 (t) を求めると、

t=Vat=\frac{V}{a}

となります。

この式を移動距離の式へ代入すると、

L=12a(Va)2L=\frac{1}{2}a\left(\frac{V}{a}\right)^2

となります。

分母と分子を整理すると、

L=V22aL=\frac{V^2}{2a}

となります。

最後に、両辺へ (2a) を掛けると、

V2=2aLV^2=2aL

となります。

まとめ

前回は、水が持つ位置エネルギーと運動エネルギー、そして力学的エネルギー保存則について学びました。

今回は、それらのエネルギーを重量で割ることで、高さ(m)として表せることを説明しました。

このように、エネルギーを高さで表したものを水頭と呼びます。

水理学では、水頭を用いることで、位置エネルギーや運動エネルギーがどのように変化しているのかを、高さの変化として分かりやすく考えることができます。

次回は、この水頭を図で表したエネルギー線について解説します。

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