【コラム】水路幅を狭くすると水位は下がる!?

 水路幅を狭くすると、水がせき止められて水位が上がるように感じます。

 しかし、常流が続いている水路では、部分的に水路幅を狭くすると、その区間の水位は低下します。

 一方、射流では反対に水位が上昇します。

 水路幅の変化によって水位がどのように変わるのか、不等流計算を常流と射流に分けて確認します。

計算条件

今回の計算条件は、次のとおりです。

  • 流量:3.0m³/s
  • 粗度係数:0.015
  • 通常区間の水路幅:2.0m
  • 部分的に狭い区間:1.9m
  • 部分的に広い区間:2.1m
  • 水路幅が変化する区間:10m
  • 常流の水路勾配:1/500
  • 射流の水路勾配:1/100

水路幅が変化する位置では、急縮または急拡による損失水頭を考慮しています。

常流で水路幅を狭くした場合

 次の図は、幅2.0mの水路を、延長10mだけ1.9mに狭くしたものです。

 流れは右から左へ向かっています。

 距離60mの位置で水路幅が2.0mから1.9mへ急縮し、距離50mの位置で1.9mから2.0mへ急拡します。

 計算結果は、次のようになりました。

 部分的に狭い区間では、水位が低下しています。

 同じ流量の水を狭い断面に流すためには、流速が速くなります。流れが持つエネルギーのうち、流速として使われる割合が大きくなるため、その分だけ水深が小さくなります。

 そのため、常流では水路幅を狭くすると水位が低下します。また、計算により各断面でFr<1.0となり全区間で常流となることを確認しています。

常流で水路幅を広くした場合

 次に、幅2.0mの水路を、延長10mだけ2.1mに広げます。

 計算結果は、次のようになりました。

 部分的に広い区間では、水位が上昇しています。

水路幅が広くなると流速が遅くなります。流速として使われるエネルギーが小さくなるため、その分だけ水深が大きくなります。

 したがって、常流では次の関係になります。

  • 水路幅を狭くする:水位低下
  • 水路幅を広くする:水位上昇

射流では水位変化が反対になる

 射流は、水深が浅く流速の速い流れです。

 射流では、水路幅の変化に対する水位の動きが常流と反対になります。

射流で水路幅を狭くした場合

 射流では、部分的に水路幅を狭くすると水位が上昇します。

 浅く速い流れが横から絞られることで水深が増加し、限界水深に近づく方向へ変化します。

 また、計算により各断面でFr>1.0となり全区間で射流となることを確認しています。

射流で水路幅を広くした場合

 射流では、部分的に水路幅を広くすると水位が低下します。

 流れが横方向へ広がることで水深が小さくなり、さらに浅い流れになります。

 したがって、射流では次の関係になります。

  • 水路幅を狭くする:水位上昇
  • 水路幅を広くする:水位低下

常流と射流の違い

水路幅の変化による水位の動きを整理すると、次のようになります。

流れの状態部分的に狭い水路部分的に広い水路
常流水位低下水位上昇
射流水位上昇水位低下

同じ水路幅の変化でも、常流と射流では水位が反対方向へ変化します。

高くなった水面は、なぜ上流へ広がらないのか

常流で水路幅を広げると、広い区間の水位が上昇します。

ここで、次のような疑問が生じます。

高くなった部分の水は、重力によって上流側へ広がり、水面を平らにしようとするのではないか。

 水が止まっている池や水槽であれば、そのとおりです。高い部分の水は低い方へ移動し、最終的に水面は平らになります。

 しかし、水路の水は止まっていません。上流から水が流れ込み、同時に下流へ流れ続けています。

 水路幅が広くなると、同じ流量を流すために必要な流速が遅くなります。上流から流れてきた水は、広い区間に入るところで流速を落とします。

 このとき、流れていた水の勢いの一部が、水を押し上げる力に変わります。そのため、広い区間の水深が大きくなり、水位が上昇します。

 もちろん、高くなった水面には、重力によって上流側へ広がろうとする力が働きます。

 しかし、その力に対して、上流からは水が下流方向へ流れ込み続けています。

  • 高くなった水が上流側へ押し戻そうとする力
  • 上流から流れてくる水が下流側へ進もうとする勢い

 この二つがつり合ったところで、水面の位置が保たれます。

 したがって、広い区間で高くなった水面が、そのまま上流へ平らに広がっていくわけではありません。

 また、広い区間の終わりで水路幅が元に戻ると、流速は再び速くなり、水深は小さくなります。そのため、水位の高い部分が広い区間に現れます。

 なお、計算図では急拡部の水面が鉛直に変化しているように見えますが、実際の水面が鉛直な段差になるわけではありません。実際には、急拡部付近の短い範囲で複雑に変化します。計算図の段差は、急拡部の直前と直後の水位を同じ位置に表示したものです。

 常流では下流側の変化が上流へ伝わるため、上流側にまったく影響がないという意味でもありません。ただし、その影響によって広い区間の高い水面が上流まで水平に続くわけではなく、流れの勢いと重力がつり合う水面形になります。

河川でも基本的な傾向は同じ

 この傾向は、矩形断面の水路だけに生じるものではありません。河川のような複雑な断面でも、基本的な考え方は同じです。

 ただし、河川では見た目の川幅ではなく、実際に水が流れている有効な流下断面で判断する必要があります。

 死水域、粗度、河床高などが同時に変化する場合は、それらの影響も含めて水位を計算します。

 また、水路幅の変化が大きい場合には、限界水深に達して計算が収束しなくなることがあります。

 今回の結果は、常流または射流が途中で変化せず、連続している場合の水位変化を示したものです。

まとめ

 水路幅を狭くすると、必ず水位が上昇するわけではありません。

 常流では、水路幅を狭くすると水位が低下します。反対に、水路幅を広くすると水位が上昇します。

 射流では、この関係が反対になります。

 実務を行うと、部分的に水位が上がることや下がることがありますが、水路幅だけを見るのではなく、その流れが常流(Fr<1.0)なのか射流(Fr>1.0)なのか限界流(Fr=1.0)なのかを確認することが重要です。

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