【水理学基礎講座④】等流計算とマニングの公式

前回は水理学の骨組みとなる「ベルヌーイの定理(エネルギー保存の法則)」について解説し、理想的な運動だけでなく損失水頭 hf を見込んだ式まで踏み込みました。

今回は、実務で毎日使う「等流計算(とうりゅうけいさん)」について解説します。

「等流」とはどういう状態なのか、そしてどのような手順で水位や流速を求めていくのか、基本プロセスを紐解いていきましょう。

「等流(とうりゅう)」とはどんな状態か?

水路に傾斜(勾配)があると、水は高低差(重力)によって下流へ押し流されようとします(推進力)。

一方で、水路の底や壁からは「流れを邪魔する摩擦抵抗」が発生し、水をブレーキのように引き止めます。

この「高低差(勾配 I)による推進力」「摩擦 n によるブレーキ」がピッタリと釣り合い、水深も流速も区間内で変化しなくなった安定した流れのことを「等流」と呼びます。

等流のイメージ

この「推進力とブレーキが釣り合った状態の流速」を表したのが、水理学で最も重要な「マニングの公式」です。

V=1nR2/3I1/2V = \frac{1}{n} R^{2/3} I^{1/2}

V:平均流速 [m/s]
n:粗度係数(壁のザラザラ度 = ブレーキの強さ)
R:径深 [m](断面積 ÷ 水に接する長さ = 水路の形の効率)
I:水路勾配(高低差 = 推進力の強さ)


勾配I(推進力)が急なほど流速 V は速くなり、粗度 n(ブレーキ)が大きいほど流速 V は遅くなるという、感覚的にも非常に分かりやすい式になっています。

等流が成立するための4つの前提条件

どんな水路でも等流になるわけではありません。等流計算を行うためには、対象とする水路区間で以下の4つの条件がすべて一定であることが前提となります。

  1. 流量 Q が一定(途中で水の流入・流出がない)
  2. 水路幅 B(断面形状)が一定(途中で太くなったり狭くなったりしない)
  3. 水路勾配 I が一定(途中で急になったり緩やかになったりしない)
  4. 粗度係数 n が一定(途中で壁の材質やザラザラ度が変わらない)

この4つの条件(Q, B, I, n)が揃って初めて、水深 H と流速 V がどこまでも一定に保たれる「等流」が成り立ちます。

ベルヌーイの定理から見た「3つの勾配」の一致

等流の状態を、前回のベルヌーイの定理(断面1と断面2のエネルギーバランス)から縦断面で見てみましょう。

ベルヌーイの定理と等流の縦断面

ベルヌーイのエネルギーバランスの式は次の通りです。

z1+H1+V122g=z2+H2+V222g+Hfz_1+H_1+\frac{V_1^2}{2g} = z_2+H_2+\frac{V_2^2}{2g}+H_f

等流では、以下の劇的にシンプルなルールが成り立ちます。

  • 水深が一定(H1 = H2 = H)⇒ 水面線は「河床線」と完全に平行になります。
  • 流速が一定(V1 = V2 = V)⇒ 速度水頭(V2/2g)も変化しないため、エネルギー線(破線)も「水面線・河床線」と完全に平行になります。

つまり等流とは、「河床勾配(河床の傾き)= 動水勾配(水面の傾き)= エネルギー勾配(エネルギー線の傾き)」という3つの勾配がすべて等しくなる状態です。

このため、落差(Z1 – Z2)がそのまま摩擦損失 hf に化けることになり、マニングの公式で用いる勾配には「河床勾配 I」をそのまま代入して計算することができます。

河床勾配 = 動水勾配= エネルギー勾配の理由

等流では、高低差による推進力と、水路底からの摩擦ブレーキが完全にピッタリ釣合っています

加速も減速もしないため、流速は上流から下流までどこまでも一定(V1 = V2) に保たれます。

それにより水深がどこでも一定(H1 = H2)です。水路の底から常に同じ高さ(水深 H)のところに水面があるので、水面線は河床線と完全に平行になります。

等流計算の具体的手順(流れ)

実務における等流計算の目的は、与えられた条件(Q, B, I, n)から「基準となる水深(等流水深 H0)と流速 V」を弾き出すことです。

計算は「マニングの公式」を用いて以下のステップで進めます。

ステップ①:マニングの公式と連続の式を組み合わせる

平均流速 V [m/s] を求めるマニングの公式は以下の通りです。

V=1nR2/3I1/2V = \frac{1}{n} R^{2/3} I^{1/2}

これに流量の基本式(Q = A・V)を組み合わせると、流量 Q の式になります。

Q=A1nR2/3I1/2Q = A \cdot \frac{1}{n} R^{2/3} I^{1/2}

ステップ②:断面形(幅 B・水深 H)を代入する

矩形水路(幅 B、水深 H)の場合:

  • 断面積 A:B ・H
  • 潤空 S(水が壁や底に接する長さ):B + 2H
  • 径深 R(A / S):B・H/(B + 2H)

これらを流量の式に代入すると、次のようになります。

Q=(BH)1n(BHB+2H)2/3I1/2Q = (B \cdot H) \cdot \frac{1}{n} \left( \frac{B \cdot H}{B + 2H} \right)^{2/3} I^{1/2}

ステップ③:収束計算(試行錯誤)で等流水深 H0 を求める

分かっている条件(Q, B, I, n)を代入すると、残る未知数は「水深 H」だけです。

しかし、H が 2/3 乗の中にまで散らばっているため「H = …」の形に手計算で解くことはできません。

そのため実務では、Excelのゴールシークなどの「試行錯誤法(収束計算)」を用いて、Q の値が一致する水深 H(=等流水深 H0)を弾き出します。

Excelのゴールシークについては合成粗度係数について解説 – 土木系情報サイトで解説していますので参考にしてください。

まとめ

等流計算のプロセスを整理すると以下の通りです。

  1. 条件の確認:Q, B, I, n が区間内で一定であることを確認する。
  2. 式の組み立て:マニングの公式 Q = A・1/n・R2/3・I1/2 に断面形状をあてはめる。
  3. 基準水深の導出:収束計算によって、その水路の基準となる等流水深 H0 を求める。

等流計算で求まる等流水深 H0 は、その水路における「最も基本的で安定した基準水位」です。

またマニング公式については水路の粗度がなぜ断面全体の抵抗になるのか? 乱流による摩擦伝達とマニング公式の秘密 – 土木系情報サイトも参考にしてください。

次回は、不等流計算に進む前のコラム!実は「摩擦損失 hf の正体」こそがマニングの公式だった!?について詳しく解説します。

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