コラム「管水路」と「開水路」の水頭の図を比較してみよう

 水頭について説明するには、文章だけでなく図があった方が分かりやすいと感じ、説明図を作成しました。

ところが、図を作成している途中で、管水路と開水路では水頭の表し方が少し異なることに気付きます。

水頭の基本的な考え方は同じですが、管水路と開水路では、位置水頭や圧力水頭をどのように図示するかが異なることがあります。

そこで今回は、管水路と開水路の水頭の図を比較しながら、その違いを整理します。

管水路の水頭の図

 管水路における水頭の説明図は、次のようになります。

断面1に注目すると、位置水頭 z1z_1は、

基準面から管の流心までの高さ

として表します。

また、圧力水頭 P1/ρgP_1/\rho gは、

管の流心から動水勾配線(各立ち上がり管の水面を結んだ線)までの高さ

として表します。

したがって、断面1における全水頭は、次の式で表されます。

He1=z1+P1ρg+V122gH_{e1}=z_1+\frac{P_1}{\rho g}+\frac{V_1^2}{2g}

ここで、各記号は次のとおりです。

He全水頭(m)z位置水頭(m)Pρg圧力水頭(m)V22g速度水頭(m)Hf損失水頭(摩擦など)(m)V流速(m/s)P圧力(N/m2=Pa)ρ水の密度(1,000kg/m3)g重力加速度(9.8m/s2)添え字の数字1は断面1、2は断面2\begin{aligned} H_e &:\text{全水頭}\,(\mathrm{m})\\ z &:\text{位置水頭}\,(\mathrm{m})\\ \frac{P}{\rho g} &:\text{圧力水頭}\,(\mathrm{m})\\ \frac{V^2}{2g} &:\text{速度水頭}\,(\mathrm{m})\\ H_f &:\text{損失水頭(摩擦など)}\,(\mathrm{m})\\ V &:\text{流速}\,(\mathrm{m/s})\\ P &:\text{圧力}\,(\mathrm{N/m^2}=\mathrm{Pa})\\ \rho &:\text{水の密度}\,(1{,}000\,\mathrm{kg/m^3})\\ g &:\text{重力加速度}\,(9.8\,\mathrm{m/s^2})\\ \text{添え字の数字} &:1\text{は断面1、}2\text{は断面2} \end{aligned}

管水路では、管内の水が圧力を受けながら流れています。

 そのため、管の流心における圧力を圧力水頭に換算し、位置水頭、圧力水頭および速度水頭を足し合わせて全水頭を表します。

開水路の水頭の図

 次に、開水路の場合を考えます。

 開水路では、水面が大気に接しています。そのため、開水路では、水面を圧力水頭が0となる位置として考えます。

 一方、水面より下の水中では、その点より上にある水の重さによって圧力が生じます。そのため、静水圧が作用し、水中のある点における圧力水頭は、その点から水面までの深さと等しくなります。

 まず、断面1において、河床から流れの圧力水頭を考える代表点(流心)までの高さを d1d_1とします。

 また、その代表点から水面までの圧力水頭を、

P1ρg\frac{P_1}{\rho g}

 とします。

 代表点における圧力水頭は、その点から水面までの深さと等しくなります。

 したがって、河床から水面までの水深 H1H_1 は、次のように表されます。 

H1=d1+P1ρgH_1=d_1+\frac{P_1}{\rho g}

 一方、開水路の実務的な計算では、位置水頭 z1z_1を、

基準面から河床までの高さ

 として表すことが一般的です。

 その場合、断面1における全水頭は、次のようになります。

He1=z1+H1+V122gH1=d1+P1ρg\begin{aligned} H_{e1} &= z_1+H_1+\frac{V_1^2}{2g}\\ H_1 &= d_1+\frac{P_1}{\rho g} \end{aligned}

 この式では、管水路の式にあった圧力水頭 P1/ρgP_1/\rho gが見当たりません。

 しかし、圧力水頭がなくなったわけではありません。

 圧力水頭は、河床から流れの代表点までの高さ d1d_1と合わせて、水深 H1H_1の中にまとめられています。

 すなわち、

z1+d1+P1ρgz_1+d_1+\frac{P_1}{\rho g}

 を、

z1+H1z_1+H_1

 と書き換えているだけです。

管水路と開水路の違い

 管水路では、位置水頭は一般に管の流心までの高さで表し、圧力水頭は流心における圧力を水頭で表します。

z+Pρgz+\frac{P}{\rho g}

 と表します。

 これに対して、開水路では、実務上、河床高 zzと水深 HHを用いて、

z+Hz+H

 と表すことが多くなっています。

 両者は異なる物理現象を表しているわけではありません。

 水が持つ位置エネルギーと圧力によるエネルギーを、どの位置を基準として整理しているかが異なるだけです。

 また、開水路では水面が大気に接しているため、水面の圧力水頭はゼロです。

 ただし、水中の各点には、その点より上にある水の重さによって静水圧が作用しています。

 そのため、開水路にも圧力水頭は存在します。

まとめ

 管水路の全水頭は、一般に次のように表されます。

He=z+Pρg+V22gH_e=z+\frac{P}{\rho g}+\frac{V^2}{2g}

 一方、開水路では、次のように表されることが多くなっています。

He=z+H+V22gH_e=z+H+\frac{V^2}{2g}

 開水路の式では、圧力水頭 P/ρg がなくなったように見えます。

 しかし実際には、圧力水頭が消えたわけではありません。

 河床から流心までの高さと合わせて、水深 H の中に含めて表現しているだけです。

 つまり、管水路と開水路では水頭の考え方が違うのではなく、表現方法が異なるだけなのです。

 大切なのは、図や式を見るときに、

位置水頭をどの位置まで測っているのか
圧力をどの点で評価しているのか

 を確認することです。

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