河川の不等流計算やフルード数を学ぶと、次の式が現れます。
\( c=\sqrt{gH} \)
c:波速(m/s)
g:重力加速度(m/s²)
H:水深(m)
「なぜ重力加速度 g が入るのか?」「なぜ水深 H が入るのか?」今回はちょっとニッチですが長波の波速について解説します。
池に石を投げると波が広がります。
このとき水そのものが遠くまで移動しているわけではありません。
実際には水粒子は上下や円運動を繰り返しているだけで、波の形とエネルギーが伝わっています。
波長が水深に比べて十分長い波を長波(浅水波)といいます。
代表例は次のようなものです。
・津波
・洪水波
・ダム放流による水位変動
・河川の水面変動
河川水理で扱う波の多くは長波として考えることができます。
海岸の波のような短波では、水面付近だけが大きく動きます。しかし長波では違います。
水面が少し盛り上がると、水深全体がほぼ一体となって移動します。
つまり、
長波では水面だけではなく、水底近くの水も一緒に動くのです。
そのため波速は水深の影響を受けます。
例えば水面の一部が盛り上がったとします。盛り上がった部分は周囲より高い位置にあります。
すると重力によって低い方へ流れようとします。
つまり、
波を伝える原動力は重力です。
重力が大きいほど水は速く動こうとするため、波速も速くなります。
そのため式の中に重力加速度 g が現れます。

長波では水深全体が動きます。そのため水深が深いほど、一度に動く水量が増えます。
結果として波はより速く伝わります。
つまり、
・浅い水路 → 波は遅い
・深い水路 → 波は速い
となります。
この効果を表しているのが水深 H です。
長波の波速は次式で表されます。
\( c=\sqrt{gH} \)
例えば水深4mの場合、
\[ c=\sqrt{9.8\times4} \] \[ =\sqrt{39.2} \]
\[ =6.26\ \mathrm{m/s} \]となります。時速に換算すると、
\[ 6.26 \ × \ 3.6 = 22.5\ \mathrm{km/h} \]
です。
例えば水深4000mの外洋では、
\[ c=\sqrt{9.8\times4000} \] \[ c≈198\ \mathrm{m/s} \]
となります。これは、
\[ 198 \ × \ 3.6 = 713\ \mathrm{km/h} \]
にもなります。
津波がジェット旅客機並みの速度で伝わると言われるのはこのためです。
河川工学で重要なフルード数は、
\[ Fr=\frac{V}{\sqrt{gH}} \]
Fr:フルード数
V :流速 (m/s)
√(gH) :長波の波速 (m/s)
です。つまり、フルード数とは流速と波速の比を表しているのです。
長波の波速
\( c=\sqrt{gH} \)
で表されます。この式の
g は波を伝える原動力である重力
H は水深全体が動く効果
を表しています。
長波の波速は c = √(gH) で表されることが知られています。厳密な導出には流体力学の知識が必要となるため、本記事では導出過程には立ち入らず、「なぜ重力加速度 g と水深 H が波速を支配するのか」を直感的に理解することを目的とします。
河川における長波の例として、堰や水門のゲート操作が挙げられます。
例えば、流量が流れている状態で堰のゲートを急に閉じた場合を考えてみます。ゲート付近では流れがせき止められるため、水位が上昇します。しかし、水面は高い部分と低い部分が存在する状態を維持できないため、水位は水平になろうとします。その結果、ゲート付近で生じた水位上昇は上流側へ伝わっていきます。
このとき伝わっているのは水面だけの変化ではありません。水深全体が一体となって運動しながら水位変化が上流へ伝播しています。このような現象が長波(浅水波)の一例です。
この長波の波速と流速との比を表したものがフルード数です。次回はフルード数と常流・射流について解説します。

