前回の記事では、
- 力
- 仕事
- 位置エネルギー
- 運動エネルギー
- 力学的エネルギー保存則
について解説しました。
前回学んだように、水も物体と同じようにエネルギーを持っています。
しかし、水理学ではジュール(J)という単位はほとんど使われません。
その代わりに使われるのが
水頭(Head)
です。
今回は、
なぜエネルギーを高さで表すのか
というところから、水頭の意味を詳しく解説します。
エネルギーを高さで表す理由
前回学んだ位置エネルギーは
でした。ここで、
Ep:位置エネルギー(J)
m:質量(kg)
g:重力加速度(m/s²)
h:高さ(m)
です。
しかし、この式だけでは、なぜ水理学で高さ(m)を使うのかは分かりません。
そこで、まずは具体例で考えてみましょう。
例えば、重さ100Nの物体を持ち上げる場合を考えます。
この物体を1m持ち上げると、位置エネルギーは
になります。
さらに、この物体を5m持ち上げると、
の位置エネルギーを持つことになります。
ここで逆に考えてみましょう。
もし、この物体が500Jの位置エネルギーを持っていると分かったら、その物体は何mの高さにあるのでしょうか。
位置エネルギーは、
位置エネルギー = 重量 × 高さ
という関係なので、
高さ = 位置エネルギー ÷ 重量
となります。
実際に計算すると、
となり、元の高さ5mが求められました。
つまり、
位置エネルギーを重量で割ると、そのエネルギーが何mの高さに相当するのかが分かるのです。
これを一般式で表してみます。
質量 (m) と重力加速度 (g) の積は重量 (W) なので、
となります。
したがって、位置エネルギーの式
は、
と書くことができます。
さらに、この式を高さについて整理すると、
となります。
先ほど具体例で確認した内容が、そのまま一般式でも成り立っていることが分かります。
つまり、水理学では、位置エネルギーを重量で割ることで、高さ(m)として表すことができるのです。
ここで位置エネルギーを重量で割る理由は、位置エネルギーだけでなく、後ほど説明する運動エネルギーについても同じように重量で割ることで高さ(m)として表せるためです。つまり、水理学ではすべてのエネルギーを同じ方法で高さに換算し、共通の尺度で扱うことができます。
運動エネルギーも高さで表すことができる
同じことを運動エネルギーでも考えてみましょう。
運動エネルギーは、
(Ek):運動エネルギー(J)
(m):質量(kg)
(V):流速(m/s)
前回は、この式を仕事の式から導きました。
ここで位置エネルギーと同じように、運動エネルギーを重量で割ってみます。
重量は、
なので、
となります。
ここで、分子と分母にある質量 (m) を約分すると、
となります。
つまり、
は、運動エネルギーを高さ(m)で表したものなのです。
位置エネルギーでは、
となりました。
運動エネルギーについても同じように、重量で割ることで高さ(m)として表すことができました。
このように、水理学では位置エネルギーと運動エネルギーをどちらも高さ(m)に換算することで、異なる種類のエネルギーを共通の尺度で比較できるようにしています。
なぜ水理学では高さで表すのか
前回説明したように、水の流れでは位置エネルギーと運動エネルギーは互いに変化します。
例えば、高い場所から水が流れ落ちると、位置エネルギーは小さくなります。
その代わりに流速が大きくなり、運動エネルギーは大きくなります。
反対に、水の流れが遅くなると、運動エネルギーは小さくなり、その分だけ位置エネルギーが大きくなります。
このように、水の流れではエネルギーの形は変化しても、力学的エネルギー保存則により、エネルギーそのものは保存されます。
そこで水理学では、それぞれのエネルギーを高さ(m)という共通の尺度に換算して考えます。
すると、
「位置エネルギーが1m減少し、その代わりに運動エネルギーが1m増加した」
というように、エネルギーの変化を高さの変化として考えることができます。
このように、水理学ではエネルギーの変化を分かりやすく表すために、エネルギーを高さで表します。
このエネルギーを高さで表したものを水頭と呼びます。
運動エネルギーの式を導いてみる
前回、運動エネルギーは次の式で表されると説明しました。
ただし、前回はこの式がなぜ成り立つのかまでは説明していませんでした。
ここでは、仕事と力の関係から、この式を導いてみます。
まず、仕事は次のように表されます。
力を (F)、移動距離を (s) とすると、
となります。
また、物体に力を加えると加速度が生じます。
力、質量、加速度の関係は、
です。
これを先ほどの式に代入すると、
となります。
ここで、等加速度運動の関係式を使います。
初速度が0の場合、速度 (V)、加速度 (a)、移動距離 (L) には次の関係があります。
この式を変形すると、
となります。
これを
に代入すると、
となります。
したがって、
となります。
このようにして、運動している物体が持つエネルギーは、
で表されます。
ここで重要なのは、運動エネルギーは速度の2乗に比例するという点です。
つまり、速度が2倍になると、運動エネルギーは2倍ではなく4倍になります。
この運動エネルギーも、位置エネルギーと同じように重量で割ることで、高さ(m)として表すことができます。
ここで、
という式が突然出てきました。
この式は等加速度運動の公式から導くことができます。
物体が静止した状態(初速度0)から一定の加速度 (a) で運動するとき、速度 (V)、移動距離 (L)、時間 (t) の間には次の関係があります。
まず、速度は
となります。
また、移動距離は
となります。縦軸にv横軸にtをとってv=atのグラフを描いた時の面積です。
ここで、最初の式から時間 (t) を求めると、
となります。
この式を移動距離の式へ代入すると、
となります。
分母と分子を整理すると、
となります。
最後に、両辺へ (2a) を掛けると、
となります。
まとめ
前回は、水が持つ位置エネルギーと運動エネルギー、そして力学的エネルギー保存則について学びました。
今回は、それらのエネルギーを重量で割ることで、高さ(m)として表せることを説明しました。
このように、エネルギーを高さで表したものを水頭と呼びます。
水理学では、水頭を用いることで、位置エネルギーや運動エネルギーがどのように変化しているのかを、高さの変化として分かりやすく考えることができます。
次回は、この水頭を図で表したエネルギー線について解説します。
