土木で使用する公式には、加速度のうち特に重力加速度 (g)が頻繁に登場します。特に水理計算では、速度水頭 (V2/2g) の導出をはじめ、多くの公式で重力加速度が用いられています。
また、土木・建築分野では平成初期頃までは、単位体積重量に kgf/m³、許容応力度に kgf/cm² などを用いる重力単位系(MKS単位系)が広く使われていました。しかし現在では、これらに重力加速度 (g=9.8m/s2) を考慮して力の単位をニュートン(N)で表すSI単位系が標準となっています。
ニュートン(N)は力を表す単位ですが、その定義には加速度が深く関係しています。そのため、力の意味を正しく理解するために、「質量に加速度を掛けて力とする理由」とは何かを理解する必要があると思いました。
そこで本記事では、加速度の意味から説明を始め、ニュートンが定義した力の考え方について解説したいと思います。
加速度とは「速度の変化率」であり、時間が経過するごとに速度が上昇(下降)します。グラフで表すと下図にようになります。
速度が 1 秒で 5 m/s 変われば、加速度は 5 m/s²です。つまり、加速度とは「どれだけ急に動きを変えさせられているか」を示す量です。

私たちは日常的に「力」という言葉を使うが、実は力そのものを直接見ることはできない。見えるのは物体の動きの変化です。
17世紀に、まずガリレオ・ガリレイが物体の運動を研究し、「物体は力がなくてもそのまま動き続ける」という慣性の考え方を示しました。
このことは、力の役割が「物体を動かし続けること」ではなく、「物体の運動状態を変化させること」であることを意味しています。
それを受けて、1687年にアイザック・ニュートンは著書『自然哲学の数学的原理(プリンキピア)』の中で運動の法則を体系化し、力と運動の関係を示しました。
その後、この考え方は発展・整理され、現在では力の大きさを質量と加速度の積で表すこととなりました。
すなわち、
F = ma
・F:力(N)
・m:質量(kg)
・a:加速度(m/s²)
が力の定義として広く用いられています。この式は「力を計算する公式」というだけでなく、
『力とは、質量をもつ物体に加速度を生じさせる作用であり、その大きさを質量と加速度の積で表す』
という力の定義そのものを示しています。
なぜ “力=質量×加速度” なのかを加速する飛行機を例にとって考えてみましょう。
飛行機が滑走路を走り始めると、エンジンの推力によって機体は加速する。このとき乗客はシートの背中を押されるように感じます。
これは飛行機が前方へ加速度運動をしているためです。
一方、飛行機が十分に速度を上げて等速度で飛行している状態になると、加速度はゼロになる。
そのため背中を押される感覚もなくなり、静止しているときとほぼ同じ状態になる。
つまり、私たちが「力を受けている」と体感するのは、多くの場合、加速度運動が生じているときなのです。

ここで一つ疑問が生じます。体重計の上に静かに立っている人は加速していない。それにもかかわらず、体重計には力が作用し、体重を測定できます。
これは地球の重力によって常に下向きの力が作用しているためです。地球の近くでは、すべての物体に重力加速度 g が生じており、その結果として
Fg = mg
・Fg:力(体重)(N)
・m:質量(kg)
・g:重力加速度(m/s²)
が与えられます。このことから分かるように、力を考える上で重要なのは「物体が動いているかどうか」ではなく、「加速度を生じさせる作用が存在するかどうか」です。
静止している物体にも地球の重力が常に加速させようとする作用(落下)が生じており、その結果として体重計は体重を測定できるのです。飛行機でいえば背中のシートに対応する部分が、体重計では足を置く面ですね。

質量(kg)は物体そのものの量を表す単位です。
一方、力(N)は物体に加速度を生じさせる作用の大きさを表す単位です。
例えば質量100kgの物体があったとしても、
・地球上
・月面
・宇宙空間
では受ける重力加速度が異なります。そのため、構造物に作用する荷重や土圧、水圧などの「力」を扱う土木工学では、質量ではなく力の単位であるニュートン(N)やキロニュートン(kN)を使用します。
「kgは場所によって変わらない『質量(物体の固有量)』であり、Nは環境(重力)によって変わる『重量(力)』である」
SI単位については、日本では1992年(平成4年)施行の計量法により、国際単位系(SI単位系)の使用が基本とされています。そのため、現在の土木・建築分野の基準書や設計指針では、力の単位としてkgfではなくN(ニュートン)やkN(キロニュートン)を用いる必要があります。
地球の重力加速度は、国際的には標準重力加速度として 9.80665m/s2と定義されているようです。しかし、SI単位系がその小数第五位までの数の使用を義務付けているわけではありません。土木では各基準により9.8m/s2や9.81m/s2が用いられています。
ちなみに、月面の重力加速度は約1.62m/s²であり、地球の約1/6です。そのため、同じ質量の物体でも月面では重量が約1/6になります。将来、人類が月面で本格的な建設やインフラ整備を行うようになれば、土木技術者がこの値を用いて設計を行う時代が来るかもしれませんね。

