【水理学基礎講座③】ベルヌーイの定理とは?

 これまで、水が持つエネルギーを「水頭」という高さで表すことができることを説明してきました。

 全水頭は、位置水頭、圧力水頭、速度水頭を合計したものです。

 では、水が水路を流れていくとき、この全水頭はどのように変化していくのでしょうか。

 この関係を表すのがベルヌーイの定理です。

 次に示す、ベルヌーイの定理はスイスの数学者・物理学者ダニエル・ベルヌーイが、1738年に出版した『Hydrodynamica(流体力学)』で示した流体のエネルギーに関する考え方を基礎としています。今から約290年前ですね。1738年の日本では江戸幕府の第8代将軍・徳川吉宗の時代です。すごく前ですね。こちらはクーロン土圧で有名なフランス人のシャルル=オーギュスタン・ド・クーロンの250年前よりさらに前となります。

ベルヌーイの定理とは?

 水が断面1から断面2へ流れている場合を考えます。

 まず、摩擦などによるエネルギーの損失がない理想的な流れでは、断面1と断面2の全水頭He1、He2は等しくなります。

He1=He2H_{e1}=H_{e2}

 これを位置水頭、圧力水頭、速度水頭に分けて表すと、次のようになります。

z1+P1ρg+V122g=z2+P2ρg+V222gz_1+\frac{P_1}{\rho g}+\frac{V_1^2}{2g} = z_2+\frac{P_2}{\rho g}+\frac{V_2^2}{2g}

 つまり、水が流れる途中で位置水頭や圧力水頭、速度水頭がそれぞれ変化しても、それらを合計した全水頭は一定に保たれるということです。

 これがベルヌーイの定理の基本的な考え方です。

実際の流れではエネルギーが失われる

 ただし、実際の水路では、水と水路壁面との摩擦や流れの乱れなどによって、水が持っているエネルギーの一部が失われます。

 この失われたエネルギーを水頭で表したものが損失水頭Hfです。

 断面1から断面2までの損失水頭を Hf とすると、

He1=He2+HfH_{e1}=H_{e2}+H_f

 となります。

 したがって、実際の管水路の流れにおけるベルヌーイの式は、

z1+P1ρg+V122g=z2+P2ρg+V222g+𝑯𝒇z_1+\frac{P_1}{\rho g}+\frac{V_1^2}{2g} = z_2+\frac{P_2}{\rho g}+\frac{V_2^2}{2g}+\boldsymbol{H_f}

 となります。

 断面1で水が持っていた全水頭の一部が、断面2へ到達するまでに失われているということです。

開水路の場合

 開水路では、これまで説明したように、河床高を (z)、水深を (H) とすると、全水頭は次のように表すことができます。

He=z+H+V22gH_e=z+H+\frac{V^2}{2g}

 したがって、断面1と断面2の関係は、

z1+H1+V122g=z2+H2+V222g+Hfz_1+H_1+\frac{V_1^2}{2g} = z_2+H_2+\frac{V_2^2}{2g}+H_f

 となります。

 この式を見ると、開水路を流れる水の状態は、

 河床高 (z) + 水深 (H) + 速度水頭 (V2/2g)

 によって表すことができます。

まとめ

 ここまでベルヌーイの定理を式で見てきました。

 ベルヌーイの定理は、流れの中で位置水頭・圧力水頭・速度水頭が変化しても、損失がなければ全水頭は一定に保たれるという考え方です。

 実際の流れでは摩擦などによって損失水頭が生じるため、下流へ進むにつれて全水頭は低下します。

 この全水頭 (He) の高さを、水路に沿って線で結んだものが先ほどの図にも示す「エネルギー線」です。

 そして、このエネルギー線の持つ勾配が損失を計算することや、隣接断面の水深を計算するための重要な要素になります。

 このように、断面間のエネルギー収支から水深を順次求めていく計算を不等流計算といいます。次回は、この不等流計算について解説いたします。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です