残留水圧について

残留水圧

 お疲れ様です、技師Kです。今回のテーマは「残留水圧」です。実務者向きのお話になります。河川に面した護岸や橋台では、上昇した河川水位が下降に至る際に背面側の地下水位の低下が遅れるために残留水圧が生じます。そのような残留水圧を考慮すべき場合にどのように背面側の水位を設定することができるのかを国土交通省の各地方整備局が取りまとめている設計要領や設計便覧の記載をまとめました。

北海道開発局 道路設計要領R5

残留水圧に関する記載はない。

東北地方整備局 設計施工マニュアル(案)河川・道路編H15 設計施工マニュアル橋梁編R5

残留水圧に関する記載はない。

関東地方整備局

残留水圧に関する記載はない。

北陸地方整備局 設計要領(河川編)(道路編)

残留水圧に関する記載はない。

中部地方整備局 河川構造物設計要領H28 道路設計要領(設計編)H25 砂防施設設計要領R2

【ブロック張(積)護岸】

中部地方整備局 河川構造物設計要領P2-3-31のり覆工 より引用

(5) 裏込材

 護岸には、残留水圧が作用しないよう必要に応じて裏込材を設置する必要がある。ただし、裏込土砂が砂礫質で透水性が高い場合には必ずしも必要はない。なお、張り護岸では施工性を考慮して設置される場合もある。

(6) 水抜き

 護岸には、一般に水抜きは設けないが、掘込河道等で残留水圧が大きくなる場合には必要に応じて水抜きを設ける。なお、堤体材料等の微粒子が吸い込まないよう考慮するものとする。

【鋼矢板護岸】

中部地方整備局 河川構造物設計要領P2-3-66 矢板護岸 より引用

(3) 残留水圧

 護岸矢板背面の水位と前面の水位との間に水位差を生ずる場合には、残留水圧を考慮するものとする。

 なお、前・背面水位の取り方は、次のように設定されることが多い。

① 常時の水位条件は、②、③のいずれか危険な方とする。

② 常時として、前面水位は最低水位又は河床高と同高、背面水位は堤内地下水位。

③ 常時として、前面水位は低水位、背面水位は低水位より洪水位(又は護岸天端高)と低水位の水位差の2/3 あがった水位。

④ 地震時の水位条件は、前面水位は低水位、背面水位は堤内地下水位。

⑤ 堤内地下水位が不明の場合には、前面水位より護岸天端と前面水位との差の2/3~1/3 上がった水位、又は0.5~1.0m程度あがった水位等で設定するが周辺の状況から判断して設定するものとする。

⑥ 感潮区間の場合の前面水位は朔望平均干潮位、背面水位は潮位差の、2/3 上がった水位。

【砂防堰堤側壁護岸】

中部地方整備局 砂防施設設計要領 第9編 補足・参考資料 P.9-2 より引用

2 残留水圧 ・・・・・ P.3-59

 護岸背面の水位と前面水位との間に水位差が生ずる場合には、残留水圧を考慮するものとする。

護岸等が水密な場合や、裏込めなど背後の透水性が小さい場合には、前面の水位変化に対して裏込め等の水位変化が遅れ、護岸にはその水位差による水圧が作用する。

 設計ではこの差に相当する水圧が護岸等に作用するものと考える。これを残留水圧という。また、背面の地盤が高く降雨等により地下水位が高くなる場合も同様の圧力が作用する。

[河川砂防技術基準(案)同解説 設計編[Ⅱ] 第 7 章 2.5]

①常時の水位条件は、A. B.のいずれか危険な方とする。

a. 前面水位は最底水位または河床高と同高、背面水位は背面地下水位とする。

b. 前面水位は底水位、背面水位は洪水位と前面水位との水位差の 1/3~2/3 を前面水位に加えた水位とする。

[河川砂防技術基準(案)同解説 設計編[Ⅱ] 第 7 章 2.5]

②地震時の水位条件は、前面水位は底水位、背面水位は背面地下水位とする。

河川砂防技術基準(案)同解説 設計編[Ⅱ] 第 7 章 2.5を見ますと「海岸保全施設」でした。

近畿地方整備局 設計便覧(河川編)(道路編)H24

【鋼矢板護岸】

近畿地方整備局 設計便覧(河川編)2-8矢板護岸 P護岸-13 c.設計荷重 より引用

 鋼矢板護岸の設計には設計荷重として、自重、土圧、残留水圧、地震時慣性力、護岸背面の上載荷重を考慮するものとする。

残留水位の具体的数値の記載はありません。

中国地方整備局 土木工事設計マニュアル(河川編)(道路編)R5

【ブロック張(積)護岸】

土木工事設計マニュアル 第2編河川編第1章 築堤・護岸 4-2 構造細目 4-2-1のり覆工 P2-1-69 より引用

(略)なお、護岸には残留水圧が作用しないよう、必要に応じて裏込め材を設置する必要がある。ただし、裏込め土砂が砂礫質で透水性が高い場合には必ずしも裏込め材を設置する必要はない。護岸には一般に水抜きは設けないが、堀込河道等で残留水圧が大きくなる場合には、必要に応じて水抜きを設けるものとする。水抜きは、堤体材料等の微粒子が吸い込まれないよう考慮するものとする。

 吸い出し防止材は、護岸背後の残留水が抜ける際、あるいは高流速の流水がのり覆工に作用する際に、のり覆工の空隙等から背面土砂が吸い出されるのを防ぐために設置する。また、吸出し防止材は練積み護岸において裏込め材への細粒分の流入を防止したり、施工性を考慮して設置される場合もある。

【ブロック張(積)護岸】

土木工事設計マニュアル 第2編河川編第1章 築堤・護岸 4-2構造細目 4-2-6目地工 (3) 水抜き孔 P2-1-72 より引用

 護岸には一般に水抜きは設けないが、掘込河道等で残留水圧が大きくなる場合には、必要に応じて水抜きを設けるものとする。水抜きは、堤体材料等の吸い出し及び河川水が容易に入らないよう考慮するものとする。

【鋼矢板護岸】

土木工事設計マニュアル第2編河川編第1章 築堤・護岸 4-4鋼矢板護岸工 4-4-2鋼矢板護岸の設計 2)水 圧P2-1-90より引用

残留水圧は土留高の2/3程度とする。

ただし、地下水が高い場合は、その高さとする。

② 外水位については最低水位とする。

【樋門・樋管】

土木工事設計マニュアル 第2編河川編第2章樋門・樋管 5)水圧 ③ 胸壁・翼壁に作用する残留水圧P2-2-24 より引用

 胸壁・翼壁の前面の水位と背面の水位の間に水位差が生じる場合は、この水位差に伴う残留水圧を考慮する(図2-6-2参照)。

 感潮区間の場合は、前面潮位差の 2/3 の水圧差を対象とする。

図2-6-2は「柔構造樋門設計の手引き」と同じです。翼壁胸壁天端高、地下水位、WL、HWLの位置関係より4ケースを想定し、残留水位は想定される水位差hの2/3hとしています。

【橋台・橋脚】

土木工事設計マニュアル 第3編 道路編 第3節 下部工 3-5 橋台・橋脚の設計 P3-5-134 より引用

2)水位

設計に考慮する水位は、以下のようにする。

                                 設計水位

陸上部  地下水位がフーチング上面より低い場合         →フーチング上面

     地下水位がフーチング上面より高い場合         →地下水位

河川等   常時:作用の組合せに地震の影響(EQ)が含まれない場合 →HWL

     地震時:作用の組合せに地震の影響(EQ)が含まれる場合 →平水位

残留水位  残留水位の影響が大きい場合               →別途考慮

いずれの場合も浮力有り、浮力無しのケースについて設計する。

残留水位の具体的数値の記載はありません。

四国地方整備局 設計便覧(案)河川編H27 道路編R5

【鋼矢板護岸】

四国地方整備局 設計便覧(案)河川編 矢板護岸 P2-15 より引用

(4) 設計荷重

設計荷重として、自重、土圧、残留水圧、地震時慣性力、護岸背面の上載荷重等を考慮するものとする。

残留水位の具体的数値の記載はありません。

九州地方整備局 土木工事設計要領 河川編H29 道路編R5

【ブロック張(積)護岸】

九州地方整備局 土木工事設計要領 第Ⅱ編 河川編 第1章 河川堤防 2護岸の構造 P河1-44 より引用

(略)なお、護岸には残留水圧が作用しないよう、必要に応じて裏込材を設置する必要がある。ただし、裏込土砂が砂礫質で透水性が高い場合には必ずしも裏込め材を設置する必要はない。護岸には一般に水抜きは設けないが、堀込河道当で残留水圧が大きくなる場合には、必要に応じて水抜きを設けるものとする。水抜きは、堤体材料等の微粒子が吸い込まれないよう考慮するものとする。

 吸い出し防止材は、護岸背後の残留水が抜ける際、あるいは高流速の流水がのり覆工に作用する際に、のり覆工の空隙等から背面土砂が吸い出されるのを防ぐために設置する。また、吸出し防止材は練積み護岸において裏込め材への細粒分の流入を防止したり、施工性を考慮して設置される場合もある。

【鋼矢板護岸】

九州地方整備局 土木工事設計要領 第Ⅱ編 河川編 第1章 河川堤防 4自立式鋼矢板護岸等 P河1-84 より引用

Ⅰ)残留水圧は水位高の2/3程度とする。

Ⅱ)外水位については、常時の場合には低水位、地震時の場合には平水位とする。

Ⅲ)自然地下水位が外水位より高い場合は、自然地下水位からの水位高とする。

Ⅳ)地震時では残留水位はないものとする。

【橋台】

土木工事設計要領 第Ⅲ編 道路編 3下部工 3-2-3橋台に働く荷重P道2-95 より引用

(1)河川の堤防中に橋台を設ける場合には、

イ 常時荷重+HWL

ロ 地震時荷重+MWL(L.W.Lが不明な場合は計画河床とH.W.Lとの2/3とする)

の組合わせを考えなければならない。

また、水位は橋台背面と前面水位についても十分検討すること。

なお、地下水位は、危険側に作用させるため、浮力0の場合の安定も考慮しなければならない。

(2)残留水圧の考慮

 水位の変動の著しい箇所において、水際に計画される橋台の場合には前面の水位と裏込め内の水位の間に水位差を生じることがある。このような場合には、この水位差に伴う残留水圧を考慮するものとする。

内閣府 沖縄総合事務局 開発建設部 土木工事設計要領 河川編 道路編H27

【鋼矢板護岸】

内閣府 沖縄総合事務局 開発建設部 土木工事設計要領 河川編 3 鋼矢板護岸P河-16 より引用

(2)水 圧
 (a)残留水圧は水位高の2/3程度とする。
   ただし、地下水が高い場合は、その高さとする。
 (b)外水位については最低水位とする。

【橋台・橋脚】

内閣府 沖縄総合事務局 開発建設部 土木工事設計要領 道路編3下部工 3-2設計荷重 (3)残留水圧の考慮 P道-2-65より引用

 水位の変動の著しい箇所において、水際に計画される橋台の場合には前面の水位と裏込め内の水位の間に水位差を生じることがある。このような場合には、この水位差に伴う残留水圧を考慮するものとする。

この部分に挿絵があり、H.W.LとM.W.L(H.W.L~計画河床の1/2)を示していますが、河川の水位を計画河床高としてM.W.Lが残留水位と言う意味なのかどうかがよく分かりません。沖縄の方ご教授頂ければ幸いです。

まとめ

1.ブロック張(積)護岸

 ブロック張(積)護岸ですが、特にブロック積護岸は残留水圧を見込んで安定計算をするとNGとなりますが、各設計要領では裏込砕石を設置することで残留水圧への対策となるようです。筆者の意見としては、裏込砕石中を浸透する水は水抜きパイプが無いためブロック背面から基礎地盤に浸透するされることで最終的に残留水圧が生じないと思われるので、岩盤基礎などでは非常に注意しなければならないと思いました。堀込河道の場合には水抜きパイプの設置も良いようですので条件が合えばこれも良いと思いました。

2.鋼矢板護岸

 鋼矢板護岸はしっかりと決められていて中部地方整備局、中国地方整備局、九州地方整備局に記載があります。また矢板護岸が選定されるところは平野部で既存の地質ボーリングデータで地下水位も入手しやすいのではないかと思います。

3.樋門・樋管胸壁・翼壁

 樋門・樋管は「柔構造樋門設計の手引き」でもあるようにしっかりと決まっています。

4.砂防側壁護岸

 砂防の側壁護岸の残留水圧の記載があるのは唯一「中部地方整備局 砂防施設設計要領」だけでした。これは「ブロック」でもなく「鋼矢板護岸」でもなく「重力式」「もたれ式」の擁壁での適用であり、このような場合の参考になるのではないでしょうか。河川護岸では一般的にはブロックですが、場合によって重力とすることもあると思います。

5.橋台

 橋台では中国地方整備局と九州地方整備局が残留水圧の考慮について触れていますが明確な水位の記載はありません。

その中で「内閣府 沖縄総合事務局 開発建設部 土木工事設計要領」では明確に記載されているように見えますが、これはよくわからないということになります。申し訳ございません。上の方で述べた私の解釈で会っていれば唯一の記載となります。

6.その他

 以上ですが、北海道から沖縄までの残留水圧について調べた結果をお知らせしました。皆様のお役に立てれば幸いです。

 その他の参考として、日経コンストラクションの2022.2.28に記載のある「河川沿いの構造物に港湾の基準」の記事を読みますと、また違う考えがあります。詳細は著作権上お伝えできませんが現場をよく見ることが必要ということです。皆様でご確認いただければ幸いです。

 総括すると実務としては、上記の設計要領を踏まえ、現場をよく見て設計をすることが大切なのだなと思いました。

 今後も各整備局設計要領を1つのテーマで横断的な視点で見てみたいものがあれば調べて記載したいと思います。

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