移住・二地域住居について(前編)

移住

 こんにちは、技師Kです。今回は「二地域住居」です。「二地域住居」に関しては国土交通省の国土審議会の移住・二地域居住等促進専門委員会が本年(2023年)の10月6日に新しく設置され、第1回委員会が10月19日に第2回委員会が11月22日に開催されています。新しい委員会なので、話題として取り上げ「前編」としてどのようなものなのかポイントを示したいと思います。

二地域住居とは

 二地域居住とは、「全国二地域住居等促進協議会」によると、主な生活拠点とは別の特定の地域に生活拠点(ホテル等も含む。)をもうける暮らし方のことです。必ずしも、定型の定義があるわけではないそうですが、主に首都圏など都市での生活を主とするものから、地方や郊外での生活が主となり都市との関わりも一定程度あるという形態となり得るものです。 二地域居住となることで、ライフスタイルの意義として「ウィズ/ポストコロナ社会におけるテレワーク」「地域での社会参画・協働」「ふるさと回帰」「移住」などの暮らし方であり、社会的な意義として「東京一極集中の是正」「地域活性化」「地地方創生」「関係人口の拡大」となるようです。筆者としては普段は東京など首都圏で過ごして週末に地方の素晴らしい自然と融合した住まいで過ごせたら良いですね。

現況把握

 コロナ禍以降、東京圏在住者の地方移住への関心が高まっているようです。20歳代の地方移住への関心は全年齢平均よりも大きく、45%が地方移住への関心を持っているとのことです。意外と多いですね。

 地方移住への関心理由は「人口密度が低く自然豊かな環境への魅力」が33.1%、「テレワークにより地方でも同様に働けること」が22.6%、「都市での仕事重視から地方の生活重視への変更」が20.9%となっています。やはり人間の生活は自然が大好きなのですね。それは本能だと思います。データは2023年3月時点です。

東京一極集中について

 東京一極集中についてですが、産業別にみると特に知識産業が顕著のようです。東京が占める従業員割合として「IT産業(情報通信)」は51.1%、「学術研究、専門・技術サービス業」は25.1%となっています。

関係人口の拡大・深化に向けた目標

 国としては、関係人口の拡大として、2032年度を目途に関係人口をコロナ禍前(2,000万人)に比べて1.5倍程度(3,000万人)に拡大することを目指すとしています。

移住・二地域居住等の促進の課題

移住・住まい

 移住に当たっては多くのハードル があるようです。移住先を決める段階から、実際に現地で暮らし始めるまでどのようにするのかなど。主に課題は大きく3つ「住まい」「なりわい(仕事)」「コミュニティ」があるようです。

1.住まい

 ・地方部には空き家が増えてはいるが活用できる物件が少ない。

 ・賃貸の供給量が少ない。

 ・住まい確保にかかる費用が大きく判断にリスクが伴う。失敗したらどうしようか。

 ・二地域間を移動するために高速道路利用や燃料費、新幹線等の交通費の費用が個人負担が大きい。

 ・子育て世代の育児・教育環境・買い物環境がない。

2.なりわい(仕事)

 ・テレワークが環境(wi-fiなど)の整備やコワーキングスペース等の働く場がない。

 ・働く場所に子供を預けられる機能も欲しい。

 ・移住先で仕事を見つける場合には、どのような仕事があるのか?収入面が不安。

 ・転職なき移住やテレワークを前提とした人、さらに若者、女性のニーズの具体的な部分といった課題をまだまだ可視化していく必要がある。

3.コミュニティ

 ・地域とのコミュニケーション不足や地域のルールに馴染めないことへの不安。

 ・二地域居住者等と地域住民との関係がうまくいかず孤立・孤独に陥る。

 ・自治会などの参加に不安がある。

4.上記3つに共通の課題

 ・自治体の取り組みには限界がある。民間が得られる情報にも限界がある。

 ・二地域住居のメリットや実践者の情報発信が弱い。また、地域が抱える課題についてもきちんと発信しないといけない。

 ・大学等の高等教育機関がないため、進学を機に若年層が必然的に流出。

解決方策

サテライトオフィス

1.住まい

 ・中間支援組織による空き家調査・活用など移住者・二地域居住者等へのサポート体制の充実。

 ・不動産業者との連携により空き家の調査・空き家情報の発信を行う。

 ・失敗しないよう、お試し滞在施設の整備。滞在型市民農園の整備など。

 ・UIJターンなど、若者・ファミリー層の住宅取得や改修等のコスト面のハードルを下げるための支援。

 ・交通費に関する支援(中長期的課題)。

 ・デジタル技術を活用した、官民による地域における買い物や公共交通等の利便性、医療・福祉、子育て・教育の確保。

 ・地方と都市の二つの学校が一つの学校のように教育活動を行うことができるデュアルスクール(徳島県の事例)

2.なりわい(仕事)

 ・職業のマッチング、就職後の人材育成・定着等支援として、首都圏の複業人材と地方の地元企業との人材マッチングのためのセミナー開催

 ・地方で仕事ができる環境づくりとして自治体による環境整備、人材育成支援を行う「地域の人事部」の創設。

 ・地域で仕事ができる環境としてのインフラであるコワーキング・ワーケーション、サテライトオフィス等の整備交流拠点などの拠点整備。wi-fi環境整備。旧漁具倉庫などの活用事例。

 ・グリーンスローモビリティなどの移動手段を整えて広域交流を促す。交流拠点へ行きビジネスの機会を探る。

 ・「半農半X」の農業の事例として養液栽培にシフトし農作業の負担が減り時間を創出してサーフィンや釣りを楽しむなど先進的な取り組み。

3.コミュニティ

・移住・二地域居住者等が円滑に地域のコミュニティに溶け込めるような仕組みや、定住・交流促進施設の整備等による地域交流の場の創出。

 ・地域のNPO法人との連携。

4.上記3つに共通事項

 ・全国における移住や二地域居住等の促進に繋がる情報発信の充実や、地方からの情報発信への支援。

 ・先導的な取組を行う地域の形成、全国的な横展開。

 ・流出した若年層のUターン等につながる郷土教育や地域文化の振興、なりわいの確保や起業のコンサルティング等を支援。

 ・将来に向けて地域のインフルエンサーを育てていくことが大切。行政と民間、行政と移住者の間に立つ人の存在が必要。

まとめ

 私は、この国土交通省の審議会でも始まったばかりの「二地域住居」と言うテーマについては、「東京一極集中」を是正するための第一段階であると思いました。また、youtubeの動画などを見ますと、地方に移住するのは住む家を探すことや改装などかなり大変な思いをされているようです。取り組みが進んでいるところは進んでいるが、そうではないところもたくさんあるようです。地方の自然の素晴らしさは魅力ですので、もっと取り組みが進むと良いですね。「後編」では具体的な取り組み事例を紹介したいと思います。

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