擁壁の許容鉛直支持力度を前面が「水平」と「斜面」で比べてみた

  擁壁の許容鉛直支持力について、擁壁前面が一般的には「水平」の状態が標準的であると思いますが、山岳道路などでは「斜面」上に設置されていることもあると思います。今回はそれぞれについて同じ擁壁形状で許容鉛直支持力度にどのような違いが生じるのかを確認してみようと思います。
 擁壁形状や荷重・地質条件は「基礎地盤の許容鉛直支持力を荷重傾斜ありとなしで比べてみた」の「荷重傾斜あり」のケースと同様とします。

擁壁前面が「水平」の場合

 「基礎地盤の許容鉛直支持力を荷重傾斜ありとなしで比べてみた」の「荷重傾斜あり」の計算を今回の前面が水平のケースとして使用します。

 

 まず、擁壁前面が水平の場合の許容鉛直支持力度は「82KN/m2です。

擁壁前面が斜面の場合

 前述の「水平」の部分に対し「傾斜」の場合には擁壁前面に余裕幅としてbの水平部分を確保し、それから斜面を設定します。下記に示す計算例はb=1.0mとし、斜面角度はβ’=40°として計算を行います。

 擁壁前面が1mの余裕幅で40°の斜面の場合の許容鉛直支持力度は「15KN/m2です。かなり小さい値になりました。

※計算に必要なNc、NγやC*、B*、μ、λ、などは道路土工擁壁工指針に記載の方法にて設定。

擁壁前面が斜面(40°)の場合で全面余裕幅bを0m~8.62m(γ’)まで計算

 上記にて前面余裕幅b=1.0mによる計算を行い、かなり小さい値になることがわかりましたが、b=0からすべり面縁端までの距離γ’=8.62mまで1.0mごとに別途計算を行った結果を下記に示します。前面が水平の82KN/m2のケースとも比較してみたいと思います。

前面余裕幅b(m)許容鉛直支持力度Qa(KN/m2備 考
06斜面傾斜40°
115
224
332
441
550
658
767
876
8.62(γ’)81水平82KN/m2と近似

 上記結果により、すべり面縁端までの距離γ’=8.62mでは水平での値に近似するとともに、γ’の前面余裕幅をとるまでは前面の傾斜の影響を受けるということが確認できました。

まとめ

 擁壁前面が水平であるのに対して斜面の場合にはかなりの許容鉛直支持力度の低下が生じます。また前面余裕幅が十分に確保できず上記のような条件では安全に支持できないことになり、より強度の高い地盤に支持させる必要があります。
 また、すべり面縁端までの距離γ’も擁壁設置の際に目安になるのではないかと思います。

関連商品

人気アイテムで暮らしをちょっと快適に

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です