擁壁の安定計算で作用させる荷重には「土圧」がありますが、それ以外には道路擁壁であれば擁壁の天端(上端)のすぐ横に車が通る事を想定した「載荷重」としてq=10kN/m2を作用させます。その載荷重qは擁壁にどのように作用させるのかを解説したいと思います。載荷重を考慮した場合、擁壁工指針(H24)を見ると計算にどのように反映するのか詳細には記載されていませんし、「そういえばどんな計算だったかなーと」思う時もあるのではないかと思いまして、今回一般的になされている方法で解説いたします。計算方法はクーロン土圧公式と試行くさび法では異なるためそれぞれで説明いたします。物理的作用のメカニズムは本来1つなので、計算方法の違いになります。
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まず、クーロン土圧公式(微分dP/dω=0を解いた最大土圧の公式)による場合ですが、下記に示す図ー1のように三角形分布の土圧(青線)に追加して載荷重は等圧の平行四辺形の分布(紫色)を作用させます。それぞれの面積に別途算出した主動土圧係数KAを乗じた値を擁壁に作用させます。
※図ー1のPA、PA1、PA2は本来、壁面摩擦角δの傾斜を付しますが、荷重分布も相まってδを付すと図がとてもややこしくなるので、簡単に水平として表現しています。本当は壁面摩擦角δの傾きがあると思ってください。
壁面摩擦角δについては、クーロン土圧について解説の図ー2や内部摩擦について解説を参照願います。

図ー1 クーロン土圧公式の載荷重
次に、試行くさび法による場合(すべり面を角度(ω)を少しずつ変えて主動土圧合力が一番大きくなる値を計算)です。
ωを変化させる際に、載荷重もそのωのすべり面の範囲に入る延長lの分の載荷重W2を考慮します。試行くさび法に用いるPAの公式中のWにはW1+W2を代入します。
※図ー1のPAは本来、壁面摩擦角δの傾斜を付しますが、クーロン土圧公式同様に、本当は壁面摩擦角δの傾きがあると思ってください。

図ー2 試行くさび法の載荷重
いかがでしょうか、見た目でパッと分かるように載荷重の計算への反映を図で書いてみました。
道路土工擁壁工指針では、試行くさび法を使うこととされています(H24道路土工擁壁工指針P.100より)ので、道路擁壁ではこの試行くさび法のイメージでOKです。
実際に以下の計算条件にてクーロン土圧公式と試行くさび法の場合で載荷重を作用させた土圧を算出してみたいと思います。
q:載荷重(kN/m2) =10.0kN/m2
γ:裏込め土の単位体積重量(kN/m3) =19.0 kN/m3
H:土圧作用高(m) =5.0m
φ:裏込め土のせん断抵抗角(°) =30°
α:壁背面と鉛直面のなす角(°) =0°(1:0)
β:のり面傾斜角(°) =0°(1:0)
δ:壁面摩擦角(°) =20°
θ:壁背面と水平面のなす角(°) =90°

クーロン土圧公式では、以下のように土圧PA=85.748kN/mになりました。


合力作用位置hAはバリニオンの定理により以下のように求められ1.812mになります。

試行くさび法では別途計算しましたところ、以下のように土圧PA=85.748kN/mになりました。
計算の方法は全く違うのに、不思議ですね、やっぱりクーロン土圧公式と全く同じ値になりました。

合力作用位置hAは道路土工擁壁工指針によるとH/3で良いとされ5.0m/3=1.667mになります。
いかがだったでしょうか、載荷重を擁壁に作用させる場合には、クーロン土圧公式の場合には土圧と載荷重のそれぞれを壁体に作用させる計算方法です。試行くさび法は載荷重を土圧に含める形としています。また試行くさびの土圧に含める範囲は試行くさびのすべり面と擁壁背面の中に入る範囲としていることが分かりました。
また、合力PAの作用位置ですが、土質力学の参考書ではクーロン土圧公式の場合、壁背面に作用する土圧分布は三角形分布ですが、載荷重は等分布なので、それぞれ図心の位置が違うことより合力PAの作用位置は、それぞれの中立位置となり、上記の計算では1.812mとなりました。しかし、試行くさび法を基本とする道路土工擁壁工指針ではこのような場合もH/3として良いとされていまして1.667mとなりました(H24道路土工擁壁工指針P.100、P101より)。この作用位置については参考書と擁壁工指針では少し違いが生じました。参考書に記載のクーロン土圧公式の方が厳密な計算方法であると思います。しかし、私が見た限り、各設計基準でクーロン土圧公式の場合の合力の作用位置について言及したものが見当たりません。今後もう少し調べたいと思います。
