今回は、自立式鋼矢板土留め壁について1/βを考えてみようと思います。
道路土工 仮設工指針には以下の記載があります。チャン(chang)の式ですね。l0は根入れ長で、βは杭の特性値です。


そして、βの式中のKHは水平地盤反力係数ですが、仮設工指針には「通常、1/βの範囲の平均値」と記載があります。これをみて何のことかと思うことがあると思います。
まず、1/βの算出ですが式中のKHの式は以下になります。
また、式中のE0はN値から求めるため、N値から水平地盤反力係数を推定することになります。
そこで、地盤のN値は根入れ地盤のN値ですが、一般的に深さ方向にN値は変わりますので、1/βの深さの平均N値を使うということになります。ここで最初に平均N値を設定するときはその深さ(1/β)を仮定します。その平均N値より算出された1/βが仮定した1/βと同じになるまで深さを変えて計算します。同じになればその時算出される水平地盤反力係数が1/βの範囲の平均値です。


KH0 :直径30㎝の剛体円板による平板載荷試験の値に相当する水平方向の地盤反力係数(kN/m3)
E0:地盤変形係数(kN/m2)
E0=2800N(標準貫入試験より得られるN値にて推定する場合)
N:標準貫入試験より得られるN値
α:地盤反力係数の推定に用いる係数で標準貫入試験のN値よりE0=2800Nで推定する場合はα=1
BH:換算乗荷幅で鋼矢板の場合は10m
そして、次に水平地盤反力係数が「通常、1/βの範囲の平均値」ということは、水平抵抗がこの範囲(深さ)の地盤で受け持つという意味です。

そして、水平地盤反力係数の仮設工指針には「通常、1/βの範囲の平均値」とのことですので「水平方向の地盤の反力は1/βの深さの地盤で受け持つ」という意味だと思います。
また、根入れ長l0が2.5/βということですが、さまざまな文献を読むと、半無限長の杭として扱う際は3.0/βとされています。また2.5/βとしても誤差は小さく半無限長の杭としても差し支えないともされています。仮設工指針は本設構造物ではなく仮設構造物ですので、少し短い2.5/βを採用しているのでしょう。
ちなみに半無限長の杭とはその長さをとればそれより根入れをいくら深くしても効果が変わらないという深さだけ根入れを確保した杭です。半無限長の杭が最もその杭がコスパ良く効果を十分に発揮する長さの杭ということでしょう。
これに対して有限長の杭がありますが、これは半無限長の杭より短い杭で十分に杭の能力が発揮できませんので、一般的に仮設工に関する指針では半無限長の杭を標準としていると思われます。
さらに、これらの以上の1/β、2.5/βなどの深さと、鋼矢板のひずみ分布には関係があると思っていますが文献には明確な記述がありません。
その他には仮設構台の設計を行う際に支持杭の座屈を検討する際の柱の長さを設定するには、地表面から出た杭長にこの1/βの長さも加えています。それはおそらく地表面付近の地盤中では杭は変位するため座屈長に入れ込んで、下端の固定点となる深さを水平地盤反力を受け持つ深さとして設定されているのだと思います。
上記筆者の推測として申し上げた部分もありましたが、それは既に上記を把握されている技術者の方々と共に共感したい部分であります。設計に際しては定められた計算法にて実施していただければと思います。